文芸誌『竜骨座』

自由な創作活動を楽しむ文芸・文学サークルcarina。文芸誌『竜骨座』の作成。

『市民ケーン』(原題:Citizen Kane, 1941)

『第三の男』で有名なオーソン・ウェルズ監督のアメリカ映画。

 不朽の名作として、必ずといっていいほどヨーロッパでも名前が挙がってくる映画(c.f. https://m.imdb.com/title/tt0033467/)。

 「バラの蕾(rosebud)」という謎の遺言を残し、この世を去ったかつての新聞王Kane。幼少期に縁あって銀行家の養子(のような立場)となり、世界でも有数の大富豪となる。

 作中では、インタビュアーが、Kaneの周囲の人物から聞き取りを進めるという形式で「バラの蕾(rosebud)」の謎に迫っていく。だがしかし、最後までインタビュアーはその謎を解けずに終わる。

 制作されたのが1941年(太平洋戦争が始まった年!)とは思えないほど現代チックかつ汎用的で、パンフォーカスや、ロー・アングルなど、当時としては画期的なあらゆる映画技法を用いている。

 『東京物語』で著名な小津安二郎も、徴兵先のシンガポールで、捕虜の米軍からかっぱらったこの映画を観ることができたというのは有名なエピソードである。

 個人的な感想としては、全体的にストーリーに無駄がなく、序破急が非常にしっかりとしていた印象である。映画技法に新鮮味が感じられないのは、後代の映画監督が皆この映画を一様に模倣したからであろう。

 とはいえ、やはりチャップリンの映画の方が浅学菲才な私の性分には合っていると思う(但し、Limelight を除く)。

廣瀬 和巳