文芸誌『竜骨座』

自由な創作活動を楽しむ文芸・文学サークルcarina。文芸誌『竜骨座』の作成。

「石原慎太郎と西村賢太が死んだ」

 

歯に衣着せぬ物の言い方で有名な二人が立て続けに死んだ。
太宰や安吾のような無頼派とも一筋違う、まさに己の身をもって無頼漢のような生き方を体現した二人だった。それだけに世間の反撥も凄まじいものであっただろうし、気の休まる時間も少なかったのではないか。

石原慎太郎。『太陽の季節』を読んだのは高校一年のとき。あの斬新な障子の破き方には舌を巻いた。右寄りの政治的発言やマイノリティを徹底的に蔑視する姿勢には、全く同意できないが、文筆家としての才能は本物だったと思う。

西村賢太。『苦役列車』、『無銭横町』で描いた異邦人としての主人公「貫多」は、氏の姿、生き方そのものである。氏が書き上げた古式ゆかしい私小説の数々には、同世代の人間がバブル景気で浮かれている日本の暗部がありありと描かれている。

そうした哀しい訃報が続いたので、居ても立っても居られなくなり、中華屋で安くて不味いカップ酒をあおった。1か月ぶりの外食だ。ほろ酔いになり、不器用だけれど最期まで己の信念を貫いた二人の人生について、色々と考えてしまった。